梅雨に入り、朝から本格的な雨が降り続くあいにくのお天気のなか、19人の参加者の方々と生活習慣病と熱中症について勉強しました。

生活習慣病は読んで字のごとく、生活習慣によって引き起こされる習慣です。一人一人に生活習慣とは何かお尋ねしますと、運動、食事、睡眠、入浴、喫煙など一般的なものに加えて、ものの考え方や姿勢など、かなり具体的な意見がでました。その中で好ましくない生活習慣が健康を害していきます。わずかな異常値がが慢性化して病気の範疇になり、無症状であったものが症状をおこすようになり、取返しのつかない状況になって後遺症をもたらしひいては死にいたる。まるで山の小川が徐々に太くなり濁流になって海に押し寄せる、そんな感じです。

生活習慣病は血管病といっても過言でありません。全身の臓器をめぐっている血管は、生まれてから死ぬまで何十年にわたり使い続けます。例えていうなら、修理や交換することなく使い続けるゴムホースのようです。ゴムホースが次第に固くなり中にごみがつまったり、破れたりする劣化が、いわゆる動脈硬化です。生活習慣の改善は動脈をいかに長持ちさせるかということでもあります。生活習慣病は、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、肥満、心筋梗塞、脳卒中だけでなく、特定のがん、認知症なども深く関わっています。現在高血圧症は人口の約1/3、糖尿病は約1/5、脂質異常症にいたっては1/2弱がり患しているのが現状です。これらの疾患が一つ増えるごとに、脳卒中や心筋梗塞などの致死的疾患のリスクが2倍、4倍…と指数関数的に増加します。これらの現状は、医療経済においても危機的な状態であり、国が対策を積極的に推し進める理由でもあります。

アメリカではすでに1965年にブレスローの7つの生活習慣というものが提唱されました。その後、日本でも生活スタイルの欧米化にともなう生活習慣病の増加で、様々な研究がなされてきました。現在、日本人にとってもっとも簡便でかつエビデンスのある生活習慣の改善が「一無、二少、三多」です。すなわち一無:禁煙、二少:少酒、少食、三多:多動、多休、多接(多くの人と接し趣味をもつ)です。とてもシンプルで、しかし実際になかなか習慣化しにくいこの標語を、覚えて帰っていただきたいと思いました。

また特定検診を積極的に受けていただきたいということをお話いたしました。今年から青年特定検診も始まり、すべての国民に対して生活習慣病の予防を推進する体制が整ってきました。予備軍を放置しない!生活習慣の見直しと早期治療を開始するために、検診の必要性についても説明させていただきました。

本日のお試し漢方は便秘のある肥満症だけでなく、高血圧症、高脂血症など生活習慣病全般の治療に使用する防風通聖散です。18種類(本日は大黄と芒硝を除いています)の生薬がブレンドされてバランスよく代謝を亢進する漢方です。様々な味が混じった漢方らしい複雑なテイストでした。

次の話は熱中症についてです。
6月に入っての1週間に日本全国ですでに900人以上の熱中症の救急搬送患者さんがありました。
京都でも福知山で90歳の女性が死亡、5月末には中学校で集団熱中症の報告もありました。「京都の夏は暑い」と言われていますが、たしかに他都市にくらべ真夏日や猛暑日が多い傾向にあります。湿度は昔より低下傾向にあり、「京都の夏は熱い」になってきているようです。

熱中症は外気温に体調がついていけないことによっておこる不調です。めまいやたちくらみ、筋肉痛など軽症を放置していると、倦怠感や頭痛や脱力、そして痙攣や意識消失がおこり命に関わります。急に熱くなった湿度の高い時に起こりやすく、まだ暑さに慣れていない7月上旬が一番多いといわれています。
しかしクリニックでも、
例年5月下旬から熱疲労の患者さんが出始めることから、必ずしもそうとは限らないようです。熱中症は自律神経調節機能が弱い高齢者や幼小児、病後、肥満の方が多く、半数が高齢者といわれています。さらに4割が室内で起こっているということで、注意が必要です。

対策は水分補給と服装、栄養と休養です。発汗によって体内の塩分も失われるので、塩分もとることが必要です。本日は毎日家庭菜園を頑張っておられる患者さんも参加くださっているので、水分補給のコツをおしえていただきました。まず外出前に水分をとっていくこと、戸外で午前中にだいたい500mlのイオン飲料はとる、そして帰ってからは追加。気温や湿度によって調節されているようです。ウォーキングや運動をお勧めしている中で、この時期の水分摂取の参考に大いになったと思います。ありがとうございました。

最後に覚えておいていただきたかったことは、熱中症対策は実はこの時期からが重要ということです。暑さで汗がでる体になるのに3,4日は要します。そして汗に無駄なミネラルが喪失しないようにホルモンが調節されるのに3,4週間要するのです。すなわち京都で最も熱中症が起こりやすい祇園祭の鉾が立つ前、7月上旬の熱中症を予防しようとするなら、すでに今日から取り組まなければ間に合わないということです。

さて暑さに負けるか、暑さに勝って気持ちよく夏を過ごすかは皆さん次第。どうか快適な夏をお過ごしください。