急に秋が深まって朝晩冷え込むようになったこの日、ホルモンについて17人の参加者と勉強しました。

まず本題に入る前に、風邪が少しずつ流行してきたので、インフルエンザやノロウイルスなど冬の感染症についてお話しました。

ブレイクタイムには今日のお試し漢方として補中益気湯の煎じをいただきました。補中益気湯には10種類の生薬が配合されています。病後や慢性疾患の体力低下や倦怠感、疲労感、食思不振などに使用します。ほかほかと体が温まって気持ち良いと好評でした。

そしていよいよホルモンの話です。ホルモンはからだのさまざまなはたらきを調節する化学物質。からだの外側・内側で環境(かんきょう)の変化が起きても、からだのはたらきを常に同じになるように保つはたらきをしています。ホルモンは非常に少ない量で効果があり、50mプールに水を一杯はってスプーン1杯のホルモンを入れて混ぜるほど、血液の中ではごく微量しかありません。私たちの体には現在約100種くらいのホルモンとホルモン様物質がみつかっており、健康を維持するための調節を行っています。ホルモンのはたらきは体の潤滑油のようなもので、専門用語では恒常性の維持(ホメオスターシス)といいます。ホルモンの構造は食物の中のたんぱく質の構成単位であるアミノ酸が数個から100個以上連なったペプチドからできています。たとえば血糖を下げるインスリンや成長を促す成長ホルモンもこの中にはいります。また食物中のコレステロールを原料とするものに、女性ホルモンや男性ホルモン、ステロイドといわれる副腎(皮質)ホルモンなどがあります。

ホルモンは内分泌臓器といわれる体の様々な部分から分泌され、ホルモンの受容体を有する標的臓器に作用します。

このようにホルモン分泌は生活リズムに応じて絶妙に調節されているわけですが、その中でも性周期や生理的ライフステージの中で劇的に変化するのが女性ホルモンです。卵巣からエストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモンが分泌されていますが、これらは脳の下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモンにより調節されています。これらの働きによって排卵、子宮内膜の肥厚、脱落(月経)が約28日間の周期で繰り返されるのが月経周期です。思春期から閉経まで、妊娠出産期間を除いてこのサイクルが繰り返されるわけですが、ホルモン調節が何らかの要因でうまくいかない場合に様々な不調をきたします。これらの不調の中で最もなじみのあるものが更年期障害です。

更年期とは女性ホルモンが徐々に減少して排卵が終了する50±5歳の期間をいい、すべての女性に訪れるライフステージです。前述したように、女性ホルモンが減少すると2階建て構造である脳からの刺激ホルモンが大量に分泌されて、卵巣より女性ホルモンを分泌するように働きかけますが、すでに卵巣機能は衰えています。大量の下垂体刺激ホルモンは卵巣以外の臓器にも作用を及ぼすため、自律神経のバランスが崩れる事態が引き起こされ様々な症状が出現します。これがいわゆる更年期障害です。

更年期障害は、肩こり、めまい、冷え、ホットフラッシュ、うつ状態など多岐にわたります。治療は欠乏したホルモンを補充する、ホルモン補充療法が理屈にかなった治療方法ですが、漢方薬も有効な治療法として頻用されます。更年期障害によく使われる漢方薬は、女性ホルモンの欠乏によっておこる血液循環を改善することを柱としており、患者さんの状態によって使い分けることにより、テーラーメードの選択ができる利点があります。

そのほかに子宮筋腫、子宮内膜症、月経困難症など女性特有の病気に対し、対症療法や代替療法として漢方は効力を発揮します。

ホルモン全般についての話と、その中で今回は女性ホルモンについて詳しくお話しました。50mプールに匙一杯で体全体の潤滑油の役目をする小さな巨人のようなホルモン、悪者扱いされているコレステロールが実はホルモンの原材料だったこと、ステロイドってホルモンだった、更年期障害の仕組み等々、参加者全員とても興味深げに熱心に聴いてくださいました。