祇園祭の宵山の日、18人の方が参加され、夏の病気の話をしました。
昨年につづき、『熱中症』の話は2度目となります。

熱中症は体温調節の異常により引き起こされるもので、まだ暑さに慣れていない7月下旬から8月初旬にかけて急増します。
熱中症は高齢者と乳幼児に多くみられ、4割の人が室内で発症しています。
対策は「暑熱順化」です。要するに『暑さに少しずつ慣れましょう』ということです。
熱中症を疑った場合は、安静・冷却・水分補給。程度にもよりますが、声をかけても反応が鈍いなど、意識レベルがおかしいと思われたら迷わず救急車を呼びましょう。

漢方による対策は、発汗などによる津液の喪失を補う水毒の薬(五苓散など)、体力消耗による気の喪失を補う補気剤(清暑益気湯など)が必要です。
他に夏バテやクーラー病に対しての対策とおすすめ漢方を紹介しました。

ブレイクタイムは清暑益気湯の煎じ茶。実はこの日、院長は徹夜2日目。気力で頑張っている感がありましたが、清暑益気湯を一口飲むやその苦みに急に目が覚め、嘘のように気力が満つのを実感しました!

後半は感染症の話。
まずは夏風邪。冬の風邪として代表的なインフルエンザが咳や痰などの上気道症状がメインです。それに比べて、夏の風邪はエンテロウイルスやアデノウイルスによるものが多く、上気道症状に加えて腹部症状を合併しやすいのが特徴です。夏に流行しやすい手足口病、ヘルパンギーナ、プール熱は、これらのウイルスによってもたらされます。
重要なのは、ウイルス性感染症には抗生物質は効かない!ということです。
すなわち夏風邪は、予防と自然治癒力が大切なのです。なかでも『身体を冷やし過ぎない!』というのが非常に大事で、体温が1度下がると免疫力が30%下がるといわれています。気を付けたいですね。

次に「蚊」の話。
昨年当院で、デング熱を診断するということを経験しました。東南アジアで蚊に刺された患者さんが帰国後に熱が下がらず来院、診察の際にデング熱を疑って保健所に連絡、DNA検査で診断がつきました。
今年はジカ熱の世界的な流行というニュースも入ってきています。
いずれも蚊が媒介するウイルス感染症で、高熱や発疹、重症になれば臓器障害を引き起こします。ジカ熱の方が、発熱やそのほかの症状は軽いようですが、妊婦さんが感染すると小頭症の赤ちゃんが生まれるリスクが高まることや、ギランバレー症候群という神経の特殊な病気をひきおこす可能性があるということが報告されています。デング熱もジカ熱もウイルス感染であり有効な治療法はありません。すなわち自然治癒です。
重要なのは感染拡大の予防です。これらの病気は、人から人に感染することはありません。ただし、ウイルスをもっている患者さんを刺した蚊が、別の患者さんを刺した場合、感染・発症する可能性があります。感染を疑ったらすみやかに保健所に報告、そして患者さんの生活区域の徹底的な蚊の駆除を行うことが重要です。

昨年の経験を踏まえ、当クリニックでは7月より徹底的な蚊対策をしています。
特に産卵期に入るお盆過ぎより蚊は活発に動き始め、人を刺すことが増えます。とにかく刺されないように気をつけましょう!