11月以来、約2ヶ月ぶりのセミナーの開催です。 当日は、30年ぶりの大寒波が襲うとの予報どおり、午後より急に冷え込み始めましたが、19人の方の参加をいただき、寒さを吹き飛ばす熱いセミナーになりました。

今回のテーマは「フレイルを予防する ー ロコモティブシンドローム、サルコペニア、フレイルとは?」です。

ロコモティブシンドローム(以下ロコモ)」はどこかで耳にしたことがあるのではないでしょうか?
昨今医学会だけでなくメディアでも注目されている疾患です。簡単にいうと、体の動きが悪くなって人のお世話が必要になってくる病気のことです。誰しも年をとると、足腰が痛い、背中が曲がる、転びやすい、疲れる・体力がない・・など口にします。
体の動きは「運動器」といわれる「骨・関節・筋肉」で構成されています。このどれかの調子が悪くなると、座っていられない、立てない、歩けないということがおこってきます。これがロコモです。
まず「骨」ですが、食事からのカルシウム摂取だけでなく、ホルモンの影響で維持されています。また運動という骨への直接刺激も、骨量維持に重要な役割を果たしています。年齢とともに骨量(骨密度)が減少すると骨折や変形のリスクが高まり、腰痛などの原因になります。「関節」は、まさに体の「ちょうつがい」。直接骨と骨が擦れないようにクッション代わりの軟骨が間にあるのですが、軟骨が硬くなったり薄くなり骨が直接擦れたり関節の変形によって、動かす度に痛みが出現します。 「筋肉」は骨と関節をつなぎ、伸びたり縮んだりすることで関節を動かし、立ったり座ったり歩いたり、いわゆる「動き」を作り出します。刺激によって筋力は維持されますが、放っておくと力が弱くなり、次第に筋肉量も減少し、動くことが大変になってきます。これが「サルコペニア」という状態で、骨や関節は異常がないのに、動けなくなっていくことです。
フレイル」は高齢者が筋力や活動が低下している状態(虚弱)で、多次元にわたる概念をさします。すなわち身体面ではロコモやサルコペニアが、精神・心理面ではうつや認知症が、社会的側面では孤独や閉じこもりがおこってきます。その結果、寝たきりや関節障害、認知症が進行し、最終的には誤嚥や排泄障害、褥瘡などが原因で衰弱死亡につながります。この一連の虚弱性をさしてフレイルと呼びます。 要するにフレイルは、ロコモやサルコペニアを包括するより上位の概念です。フレイルを予防するために、ロコモやサルコペニアの予防が大変重要になってきます。
以上、セミナー前半は「ロコモ」「サルコペニア」「フレイル」について勉強しました。

後半は、骨や関節の変形を最小限にくいとどめる方法、筋力をつける方法、いわゆる「ロコモ」を体験してもらいました。
担当は当院スタッフの久森看護師と小荒事務員。
運動の前に体を温めてもらえるように、本日は漢方を早めに試飲しました。今日の漢方は「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」の変方です。呉茱萸や生姜が入る究極の温める漢方で、しもやけ、腰痛、冷えからの腹痛など、この時期たくさんの患者さんに処方しています。舌を刺激するショウガの味とシナモンの香り、とろけるような甘草の甘みで、体はホカホカしてきたところで、いざロコモ体操。
椅子に座ってできるもの、立ったまま、寝てなど、スタッフの実演とガイドで、参加者の皆さん大いに頑張っています。

最後は小荒事務員のノルディックウォーキングの話と実演。
実は小荒さんはノルディックウォーキングのインストラクター!毎週北山の植物園で指導されている本格派。ポールを使用した歩行は「歩かない歩行」と説かれるほど、2足に頼らない4足歩行を体現したもので、腰痛や関節痛のある人こそ是非取り入れてほしいスポーツとのことです。
皆さん興味津々で説明を聞いておられました。
体を動かして少し紅潮した顔の参加者の方々、心なしか足取り軽く帰宅の途につかれました。

今回の体験型セミナーは大変好評で、是非またやって欲しいと全員一致の感想をいただきました。
最近クリニックには、これまで以上に様々な問題を抱える患者さんが来院されています。いくつも病院に行ったが問題ないといわれ、何十年も一人で絶望感の中生活されてきた方、家族にも言えないような悩みを抱えた方、あまりに症状が複雑で何科に行ったらいいのかもわからず問診票が書けない方、介護疲れで追い詰められたり、その逆にお見送りを果たして空の巣になった方、不登校や引きこもりとそれに悩むご家族の疲労など・・。
背景には、私達をとりまく様々な問題が複雑に絡み合っています。
セミナーの時間を利用して、少しずつですが病気のテーマにこだわらない健康、生活、社会、環境問題などテーマを広げて、時にはクリニック外のセミナーにもトライして、一緒に学んでいきたいと思います。
これからもたくさんの方々の参加をお待ちしています。