2月20日、冷たい雨が時に激しく降り出す不安定なお天気の中、16人の参加者が来て下さり、第7回くらしと健康セミナーを開催しました。
テーマは「花粉症&アレルギー ~アレルギーが軽くなる体と心を作ろう~」です。

 まず「アレルギーとは」という話。アレルギーは自分の免疫が特定の抗原(アレルゲン)に対し過剰に反応することです。花粉症や食物アレルギー、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、自己免疫性疾患など様々な病気があり、アレルギー反応の起こり方によりⅠからⅤ型まで分類されます。そのうち最も一般的なものがⅠ型で、花粉症や食物アレルギーなどがこれに分類されますが、アナフィラキシーショックなど重篤な症状を呈するものもここに含まれます。
 Ⅰ型アレルギーの作用機序は、まず抗原に曝露され続けることで体内に抗体ができます。抗体が肥満細胞と接着すると肥満細胞からヒスタミンをはじめとする化学物質が放出されます。ヒスタミンによって粘膜がはれたり(鼻づまり、息苦しさ、じんましん)、分泌物(鼻水、痰)がでたり、かゆくなったり(蕁麻疹、結膜炎)することがアレルギー反応です。
 アレルギーの原因は、抗原の過剰な曝露だけでなく、生活環境(住環境、温暖化や乾燥、埃や化学物質、精神的ストレス)、遺伝などとの関与がいわれています。そのほかに衛生仮説というものもあり、幼少時に衛生過ぎる生活環境で生活するとアレルギーが発症しやすいとも言われています。
 アレルギーの検査は、発症までの時間と経過、既往歴、家族歴などの問診が重要です。血液検査でアレルギー体質かどうかを調べる非特異IgE抗体(RIST)、何に対するアレルギーかを調べる特異IgE抗体(RAST)、ヒスタミン遊離試験(HRT)なども行うことがあります。
 アレルギーの治療は、まずアレルゲンを遠ざけることが必須ですが、現実的には難しいことも多いです。また交差反応といって抗原の化学構造が近いものにアレルギー反応を起こしてしまうということもあります。例えば手袋などの内側に滑りやすいように付けている白い粉=ラテックスとバナナは化学構造が近いために、両者で同様のアレルギー反応が間違って起こることがあります。
 そこで一般には薬物治療が中心になります。一般的には内服薬として抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、ステロイド剤、漢方薬などがあります。外用薬として塗り薬、目薬、点鼻薬があります。

 ここで恒例の漢方試飲タイム。この日はアレルギー性鼻炎で頻用される「小青竜湯」を用意しました。「青竜」とは俳句では春の季語。また都の東方の青竜の門は、中国からみて日本や日本海の瑞々しい地域をさすイメージと重なります。小青竜湯は、まさに花粉症の薬としてぴったりのネーミングで、この漢方を処方するようになると春の訪れを感じて、個人的には大好きな漢方ネームです。内容は8種類の生薬がブレンドされ、急性の冷えをともなう風邪や水洟に効果があるとされます。いわゆる花粉症のだらだらと水っぽい鼻水が出て止まらない時にぴったりの漢方です。前日より煎じたお味は。まろやかな甘みがあり、ショウガ、シナモンの香り高く、爽やかな後味です(麻黄は減量しています)。

 小青竜湯をいただきながら次は花粉症の話。総人口あたりの花粉症有病率は約30%で増加の一途です。今年も2月中旬よりスギ花粉が飛び始め、近畿地方の飛散率は例年の100~150%と例年通りかやや多い傾向にあります。症状はくしゃみ、鼻汁、鼻づまりの3大症状と目のかゆみや充血、その他喉の痛みや咳、重症になると発熱や全身倦怠感、咽喉頭潰瘍まで達します。
 花粉症が激増した原因は、①戦後大量植林されたスギが伐採されずに残り、開花適齢期を迎えたことや、地球温暖化の影響でスギ花粉飛散量が増えたこと。②排気ガスなどで汚染された大気中の微粒子が抗体を産生しやすくし、花粉症の発症を促進したこと。舗装道路の増加で一度地面に落ちた花粉が再び舞い散ること。③高タンパクや高脂肪の食生活、不規則な生活リズムやストレスの多い生活が、アレルギーを起こしやすくしている。④住宅やオフィスの近代化で、通気性の少ないダニ・カビの温床をつくり、アレルギーを起こしやすくしている。などが挙げられます。
 花粉症治療は他のアレルギーと同様ですが、まず花粉の曝露をさけること。外出時は花粉情報をチェックし下さい。具体的には天気が晴れまたは曇り、最高気温が高い、湿度が低い、やや強い南風でその後北風、前日が雨の場合は要注意。その他外出は花粉が飛散しやすい午後1時~3時頃は避けて、外出時は完全防備(帽子・マスク・マフラー・コートなど)で、帰宅時は玄関でシャットアウト、帰宅後は洗眼やうがいをこまめにしましょう。室内ではドア・窓は閉めて花粉の侵入を防ぎましょう。掃除はこまめにし、フローリングは毎日拭き掃除を心がけて下さい。そして就寝時の注意として、布団は外に干さず、干すなら午前中にして、取り入れたらはたいて表面を掃除機で吸いましょう。枕元の花粉は湿ったティッシュなどで拭き取るようにし、お風呂・シャワーで花粉を流し、空気清浄機を活用しましょう。そして薬と上手にお付き合いしましょう(西洋薬は前述)。花粉症に頻用する漢方は数多くありますが、症状や強さによって様々に使い分け、西洋薬と組み合わせることで、辛い時期をかなりの部分で快適に過ごすことができます。

 後半は免疫力を高めたり、呼吸を整えたり、全身の血流を改善する体操を全員で行いました。今回も当クリニックの看護師1名と事務スタッフ1名の解説と実技で、楽しく体を動かしました。そして体操前に試飲した小青竜湯でしっかりと体が温まり、鼻がすーっと通ったところで、参加者全員帰宅の途につかれました。参加者の皆様お疲れさまでした。今年の春が少しでも快適に過ごせますよう、お役にたてればと思います。