朝から暖かい雨が降る中、今回も23人が参加してくださいました。
今回は、昨年11月のセミナーでもお話した、底冷えの京都の冬にそなえての「冬の感染症」に加え、前半では「冷え」についてお話ししました。

「冷え性」は「冷え症」とはいいません。すなわち西洋医学では病気とみなされておらず、治療の対象にはなっていません。しかしながら女性の70%は冷え性といわれており、漢方医学では大切な病態であり、古くから治療が行われてきました。

 一般に体温が36℃未満の人を「低体温」と呼ぶことがありますが、「冷え性」は体温が何度以下という考え方とは異なります。
「冷え性」は普通の人が寒さを感じないくらいの温度でも、全身や手足、下半身などが冷えてつらい症状のことを指し、主に血行不良が原因でおこります。

「冷え性」の原因には
①衣服: 体を締めつける衣服
②食事:ファーストフード、チョコレートなどの菓子、果物、生野菜、乳製品
③エアコン器機:自律神経の調節障害
④運動不足、筋力低下
などがあげられます。
なかでも女性に多いのは、女性ホルモンの周期的あるいは一時的な増減による自律神経の乱れがおきやすいこと、例えば妊娠時期や更年期、ダイエットによる月経不順で、しばしば冷えが出現します。また血行不良を促進する、身体を締め付ける衣服や薄着、低血圧症(貧血症)、(ダイエットによる)栄養不足でも起こってきます。

参加者の方々にチェックシートを利用して約50項目の冷えに関する質問をしたところ、ほぼ全員が軽度から中等度の冷え性であることがわかりました。
「冷え性」の改善・対策は、簡単に言えば血行不良を治すこと。
具体的には、
・入浴の工夫:温度、入浴剤の保温効果、入り方
・食事:陽性の食べ物(後述)の推進、ビタミン類(後述)の摂取
・漢方薬の選択:(後述)
・運動:パワーウォーキング、空中自転車こぎ、骨盤体操、水泳(空中バタ足)
・良い睡眠(足を温める):湯たんぽ、ペットボトル、足を高くする、 布団の工夫、「手」、「耳」、「首」など末梢を常に温める工夫
も効果的。
すなわち、カラダの内から外から温めます。

また今回、冷えや疲れなど血行不良に有効な、簡単なツボマッサージのお話もいたしました。みんなでツボをさがして刺激すると、みるみるうちに体がホカホカ、汗がじわーと出てきました。講演開始と同時に試飲いただいた本日の煎じ漢方「人参湯」も、効果がでてきた頃です。

食事は「冷え性」対策の重要な位置をしめます。できるだけ寒い地方で採れるもの、冬に採れる、いわゆる陽性の食べ物を摂取ください。具体的にはしょうが、ねぎ、にんにく、こんにゃく、ゴボウ、根菜類、これらは血液をさらさらにする効果もあります。
逆に、暖かい地方で採れるものや夏野菜など、いわゆる陰性の食べ物はできるだけ控えてましょう。具体的には、生野菜、大豆、豆乳、コーヒー、合成甘味料、砂糖、スナック菓子、チョコレートなど。いずれも血液をドロドロにする作用があり、摂取過多は動脈硬化を促進させ、生活習慣病といわれる血管リスクをさけるよう、努力しましょう。

 

二つめのテーマは冬の感染症についてです。「風邪」は急性上気道炎の俗称であり、主にウイルス感染によって、上気道(咽頭・鼻腔) に炎症性の疾患にかかった状態をさします。

症状は
・局所症状:カタル症状(咳嗽、咽頭痛、鼻汁、鼻づまり)
・全身症状:発熱、倦怠感、関節痛
があります。
他に「おなかの風邪」といわれる消化管のウイルス感染は、嘔吐、下痢、腹痛などをおこしてきます。この中で、インフルエンザは最も感染力が強く、症状が激しいため、歴史的にも大流行によって多くの死者をだしてきました。そういう理由から、インフルエンザだけが予防や治療法が開発されたり、流行がニュースで報告されたりするのです。また「風邪」は、中国医学で「風邪(ふうじや)」によって起こされると考えていた一群の病気で、冷たい風に当たって悪寒や発熱を起こすというようなことから想定されました。

次に風邪の治療と予防の話にいく前に、ウイルスと細菌の違いをまず説明します。風邪はウイルスから、と言いましたが、そのほかに、ばい菌にかかったとか、抗生物質が、とかいう話はよく耳にすると思います。ばい菌は一般には細菌といいます。ウイルスと細菌は構造も増え方も大きさも全く異なるものです。
大きさを例にすると、細菌が観光バスなら、ウイルスはバスにのったアリほどの違いがあります。そして「抗生物質で風邪が治った」と言っている人には申し訳ないのですが、抗生物質は細菌に対する治療薬で、ウイルスには無効なのです。現在、ウイルスに効果のある薬は、インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス剤のほか、わずか数種のウイルスに対してしかありません。すなわち、風邪を治す薬はない!→自己治癒力と予防が大切!ということです。

感染経路として接触感染、飛沫感染、空気感染がありますが、大原則は「感染源に近づかない、手洗い、うがいをする」です。そして風邪にかかりにくいカラダをしてください。
冬の風邪は乾燥と低温で威力を発揮します。湿度と保温をしてください。そして体力アップと免疫力の強化のために適当な運動を心がけましょう。筋肉がつくと体温が上がります。一般に体温が1℃下がると、免疫力が30%低下するといわれています。食事についてもカラダを温める良質のタンパク質を摂取し、生姜を使った料理や根野菜、ビタミン類をしっかりとりましょう。

風邪の治療は、西洋医学と東洋医学では大きく異なります。西洋医学では根本的治療として抗ウイルス剤があり、解熱剤や鎮咳剤などの対症療法があります。一般的に作用が強く副作用に注意を要する必要があり、妊婦や子供に禁忌もしくは慎重投与など注意をようします。そして薬価が高いです。他方、漢方薬には根本的治療薬はありませんが、病期や症状にあわせて何十種類も方剤があり、多くの場合すべての年齢で使用できるため、副作用が少なく、薬価も安くなります。そして具体的に葛根湯はじめ様々な漢方を紹介しました。

風邪は予防に徹する、すなわち未病で防ぐことが重要です。未病とは「未ダ病ニナラザル」状態であり、わかりやすくいうと健康状態の範囲であるが病気に著しく近い身体又は心の状態であるとされています。どうか風邪を未病でくい止め、元気に京都の冬を過ごしてください!